相模原市内には「てるて姫」には数多くの伝説が残されています。その伝説や歴史を継承していき、相模原を代表するようなマスコットキャラクターになるように普及・促進を進めていく事業です。
イベントへの貸出も行っております。
「てるて姫」に関する情報を常時更新して参ります。
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むかしむかし、相模の国の物語…
きれいなお姫様の物語…
春のあたたかな日ざしの中で元気いっぱいひばりがさえずっています。
ここは、相模の国の横山丘陵です。
「お殿様~お殿様~。いずこにおじゃる~」
家来みんなが大騒ぎでお殿様をさがしています。
「お殿様、元気なお姫様がお生まれになりました。」
照手姫の誕生です。国をあげて大喜びです。
屋敷のそばには地蔵菩薩があり、きれいな湧水が流れています。
そのうぶ湯につかったお姫様に、お殿様と家来たちは「強さ」お母さんと姥や侍女たちは、「やさしさ」。そして、湧き水は「美しさ」を与えました。
照手姫は、いつも村の子供たちと鬼ごっこをしたり、本を読んでいました。
ある時、お父さんが大切に使っていた榎木の杖が折れてしまいました。
照手姫はかわいそうに思い、お母さんといっしょに、この杖を土に埋めてあげました。
するとどうでしょう。杖から芽が出て、根づいたのです。
そのやさしさと不思議さにお父さんも関心しました。
こうして照手は、やさしくきれいなお姫様に成長していきました。
ある春の日のことです。
小川のほとりには桜が咲き、ひばりのさえずるなか、村の子供たち楽しそうに遊んでいます。
お花見に来た照手姫は、春の美しい景色に心をなごまされ、桜の木の下で琵琶を弾き、歌うのでした。
琵琶の音と美しい歌声は、桜の花びらといっしょに春風にのって山里にまで響きわたりました。
ちょうどその頃、小栗判官(おぐりはんがん)という武士が家来たちと常陸(ひたち)の国から相模の国へ向っていました。
相模の国の里まで来ると、琵琶の音と歌声がどこからともなく聞こえてきます。
長旅で疲れ果てていた小栗一行は、その美しいねいろ音色と歌声に心をいやされました。
小栗は、音色にさそわれるまま、小川のほとりへ進んで行きます。そこには、曲を弾きおえた照手姫が、髪をといでいました。
桜の中でひときわ輝く照手姫の美しさに小栗は一目で心を奪われました。
小栗判官は、小栗満重(おぐりみつしげ)という武士の息子で、京の都で生まれました。
子供の頃はわんぱくな子でしたが、今では、強く賢い武士に成長し、常陸の国を治めていました。
その夜、空にはきれいな満月が出ていました。
小栗は、小川で見かけた姫のことを想い、大きな榎木(えのき)の下で笛を吹きました。
その木は、幼かった照手姫が植えた杖の成長した姿でした。
小栗の笛の音もまた、人々の心を深く感動させるものでした。
音色に心をひかれ照手姫は、そっと屋敷を出て、笛の音のする方へと歩いていきました。
そこには、榎木の下で笛を吹く武士の姿がありました。
小栗の想いが通じたのでしょうか。
小栗も月の光に照らされた美しい姫の姿を見つけたのです。
照手姫も笛が上手で立派な小栗にたいへん心をひかれました。
榎木が見守るなかで照手姫と小栗判官は運命的な出会いを果たしたのです。
照手姫のお父さんは、りっぱなお殿様で、国じゅうの人々から慕われていましたがそれをねたみ、面白く思っていない男がおりました。
その男こそ、照手姫の叔父、横山将監(よこやましょうげん)です。
それどころか、将監はお殿様を殺し、反対する者も皆、殺して横山党(よこやまとう)を乗っ取ろうとたくらんでいたのです。
そうして、この国をそっくり自分のものにしようとしていました。
ところが小栗判官が現れ、計画通りいかなくなりました。将監は、あせりました。
しかし小栗判官を利用する、さらなる悪だくみを思いついたのです。
「よし、武術くらべで小栗を殺してしまおう、えっへっへっ」
その頃、何も知らない照手姫と小栗はいつもの榎木の下で、愛を語らい、将来を誓い合っているのでした。
また、将監はてるてひめ照手姫のことを好きでした。
そこで武術くらべをひらき、その中で小栗を殺し、その騒ぎの中で、横山党をのっとってしまおうとたくらみました。
そうすれば照手姫は将監のお嫁さんになるしかないと考えたのです。
なんと自分勝手な悪い男でしょう。
ところが武術くらべをしてみると、小栗の強いこと、強いこと…。弓矢、剣術などことごとく小栗の勝ちです。
そこで将監は、人食い馬の「鬼鹿毛(おにかげ)」を小栗にさしむけ、食べさせようとしました。
「鬼鹿毛」は人を食べるといわれるほど気性のはげしい荒馬でしたが、小栗は、この「鬼鹿毛」をみごとに乗りこなしてしまいました。
それだけでなく馬に乗ったまま、碁盤の上に立たせるなどの曲芸までやってみせました。
これを見たしょうげん将監は、武術くらべでは、とても小栗を殺せないと観念しました。
でも、悪だくみをあきらめたわけではありません。
もっとひきょうな方法を思いついたのです。
最初のたくらみに失敗した将監は今度は宴(うたげ)を開きました。
照手姫は、いやな予感がしたのでとめましたが、小栗はまねきにおうじました。
照手姫の父であるお殿様も同席して 宴はなごやかにすすみました。
将監は、「小栗殿どんどん飲んでくだされ」と二口(にくち)ちょうしをさしだしました。
じつは、このおちょうしは中がふたつにわかれていたのです。
将監が飲んでみせた方は、普通のお酒で、小栗の飲む方には毒が入っていました。
「おのれ将監、はかったな・・・」
油断して毒を飲んでしまった小栗は無念の死をとげました。
小栗を助けようとした家来たちも将監の一味によってひとりのこらず殺されてしまいました。
「将監、小栗殿に何をする!」と一度に酔いの覚めたお殿様が言いました。
将監は「この国は、今日からワシの物じゃ」といきなりお殿様に切りつけたのです。
お殿様は不意をつかれ、かなりの深手を負ってしまいました。それでもてるてひめ照手姫とお母さんを何とか逃がすことができました。
しかし、お殿様は力つきて息を引き取ってしまったのです。
将監はさらに、お殿様の家来も皆殺しにしました。
そして、照手姫たちへ追っ手を差し向けたのです。
照手姫とお母さんは、月も出ていない暗い夜道を手をしっかり握り合って相模川に沿って、海に向かって走りました。
一方、将監の追っ手は着々と二人に迫ってきます。とうとう二人は、崖っぷちで追いつかれてしまいました。
「照手姫、お父上は亡くなりました。この国はすでに将監様の物です。姫も将監様へ嫁いでいただきます。」
「いやです!私は小栗様と将来を誓い合っているのです」
「ガッハッハ、気の毒だが、頼みの小栗も、もうこの世におらぬ」
これを聞いて照手姫は、気を失いそうになりましたが お母さんが手をしっかり握り体を支えてくれたので何とか気を取り直すことができました。
ところが追っ手がつかまえようと、伸ばした手を振り払ったはずみで二人とも、崖から真っ暗な川へと落ちて行ってしまったのです。
肉体と分離した小栗の魂は、閻魔大王(えんまだいおう)の前に到着しました。
大王は魂の行き先を決める偉い方です。
「おまえは極楽行きだ」大王は小栗にそういいました。
「私は極楽に行きたくありません。私は現世にやり残したことがあります。武士でありながら毒殺された無念を晴らしたいのです。それさえ成就すれば地獄に落ちてもかまいません。」と小栗はいいました。
さすがの大王も小栗の処遇に困ってしまいました。そこで大王とジャンケンして、小栗が負ければ極楽へ勝てば現世へもどることにしました。ふたりの勝負は、百回もあいこが続き決着がつきませんでした。
困りはてて大王は、「どうしてそこまでして現世にもどりたいのだ」とたずねました。
「私は本当は、現世に残した愛しの照手姫を守りたいのです」と訴えました。
それを聞いて大王は小栗に試練を与えることにしました。
「わかった。おまえを醜態な容貎をした餓鬼阿弥(がきあみ)の姿で現世にもどしてやる。みんなの力を借りて、四百四十四日以内に熊野(くまの)の湯へたどりつけばもとにもどることができるだろう。しかし一日でもおくれたら地獄行きだ。」
こうして小栗は現世へもどることになったのです。
「お母様もどうぞご無事でありますようにそして私は、生まれ変わったら小栗様と結ばれますように…」
そう結神社でお願いするのは照手姫でした。
彼女は相模川に落ち、誰もが死んだと思っていました。
ところが落水後、乳母夫婦に助けられていたのです。そして将監の追手を逃れるために各地を転々としました。
今では追っ手のかからないぎふ岐阜にたどりついていました。
そこで照手は常陸(ひたち)小萩と名をかえ、旅篭(はたご)の萬屋で水しめというつらい仕事をしていました。
常陸は亡き小栗の治めていた国の名で、今でも照手は小栗を慕っていたのです。
その時です。一心にお祈りをしている照手の耳元に観音様の声が響きました。
「あなたのやさしさをこの世の弱い者へ向けなさい」
「はっ」としてまわりを見わたしましたが誰もいませんでした。しかし、その声は深く照手の心に残ったのです。
照手が、いつものように参拝して店の前までもどると人だかりを見つけました。
「なんてみにくい姿なんだろう」と人々の声が聞えてきます。
餓鬼阿弥は、この世のものとも思われない姿だったので、それを見た人は気味悪がって遠まきに見物するだけで、誰も近づこうとしません。
照手も、餓鬼阿弥を見て、はじめは「気味が悪い」と思いましたが、
そのうち、みんなから冷たい目で見せ物になっているのをかわいそうに思えてきました。
そこで勇気をもって近づいていくと、首から下げた木礼が目につきました。
そこには、「私をくまの熊野に連れてって」と書かれています。よく見てみると、餓鬼阿弥は何かをうったえようとするかのようです。照手は、その姿に心が痛むと同時に、何か懐かしいあたたかいものを感じました。
その時、また観音様の声がきこえてきました。
「あなたのやさしさをこの世の弱い者へ向けなさい」
照手は決心しました。
すぐに回りにいる人々に観音様のお告げを話して「皆で力を合わせてこの人を助けてあげましょう!」と呼びかけました。萬屋の主人から五日のひまをもらってどぐるま土車を引いて行くことにしました。
さあ熊野へ出発です。皆で力を合わせ土車(どぐるま)を引きます。
「エイサラ、エイ!」
その掛け声は街中にひびきわたります。
ここは、熊野本宮湯の峰温泉 つぼ湯です。
その湯は万病に効くといわれています。
岐阜を出発した照手は、五日後には萬屋(よろずや)にもどらなくてはなりませんでしたが、餓鬼阿弥となった小栗の土車は、道すがらの、心優しい人々によって、熊野湯の峰温泉に、四百四十四日かけて、たどり着きました。
なんと不思議なことでしょう!
餓鬼阿弥すがたの小栗は、湯につかること七日で、両目が開き、十四日目には、耳が聞こえ、二十一日目には、口があき、四十九日目には、元の元気な小栗となりました。
元通りの姿になった、小栗は、閻魔大王の特別な計らいや、道すがらの人々、そしてやさしい常陸小萩(照手)に、心から感謝しました。
照手姫が、いつものように仕事をしていると、どこからともなく笛の音が聞こえてきました。
それは、とてもやさしく、そして懐かしい音でした。
仕事を忘れ、笛の音に耳を澄ませていた照手姫は、
「あれは、小栗様の笛の音。そうよ、小栗様だわ」
そう叫ぶと、仕事を放り出し、笛の音のする方へと駆け出しました。
どんどん笛の音が近づいてきます。
しかし、突然、照手姫は立ち止まり、考えました。
「なぜ、死んだはずの小栗様がここに?」
照手姫は不安になりました。
そして、もう一度耳を澄ませ、その笛の音を聞きました。
聞いているうちに、照手姫の目から、涙がぽろぽろ溢れ出してきます。
「そうよ、この笛の音は小栗様。間違えるはずもない。小栗様は生きていたのだわ!」
照手姫は、また笛の音のする方へと、走り出しました。
一方の小栗は、京の都で横山将監の悪事を暴き横山征伐に向かう途中でした。
小栗は、よく照手姫のことを想っては、笛を吹きました。
偶然に照手姫が奉公している旅籠(はたご)、萬屋の近くにさしかかったのです。
遠くから駆け寄る水しめが照手姫とも気づくはずもなく家来たちは、追い払ってしまいました。
照手姫は、以前にえのきのした榎木下で歌った歌を大きな声で歌いました。
その歌声に小栗は、おどろきました。
「なんと美しいやさしい声であろう。まさか照手姫が・・・そんなはずはあるまい。今は、将監の妻であろうはず。」
と思いましたが、あまりの美しい声に一目会おうと家来に申し付けました。
遠くから目にした小栗の姿に照手姫の目からは涙が止まりません。
そして、その姿を見た小栗も目から涙が止まりません。
照手姫と小栗は、再会しました。
大変な苦労をしましたが、夢を叶えることが出来たのです。
照手姫は、小栗の一行を萬屋(よろずや)へ案内しました。
萬屋のあるじ主人も小萩がお姫様であることを知り、つらい仕事をさせていたことを謝りました。
照手姫と小栗は、結(むすぶ)神社に御礼に行き、小栗は、照手姫の父の仇でもある横山将監を成敗し悪事を正しました。
その後、小栗は、人々を大切にする立派な殿様になり、照手姫は人々に慕われ、やさしい母親になりました。
そして、子宝に恵まれ、二人は、末永く幸せに暮らしました。