第12話 「音」
照手姫が、いつものように仕事をしていると、どこからともなく笛の音が聞こえてきました。
それは、とてもやさしく、そして懐かしい音でした。
仕事を忘れ、笛の音に耳を澄ませていた照手姫は、
「あれは、小栗様の笛の音。そうよ、小栗様だわ」
そう叫ぶと、仕事を放り出し、笛の音のする方へと駆け出しました。
どんどん笛の音が近づいてきます。
しかし、突然、照手姫は立ち止まり、考えました。
「なぜ、死んだはずの小栗様がここに?」
照手姫は不安になりました。
そして、もう一度耳を澄ませ、その笛の音を聞きました。
聞いているうちに、照手姫の目から、涙がぽろぽろ溢れ出してきます。
「そうよ、この笛の音は小栗様。間違えるはずもない。小栗様は生きていたのだわ!」
照手姫は、また笛の音のする方へと、走り出しました。